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東工大附属陸上競技部のスタッフによるのストレングス&コンディショニングの説明・解説


by kamimura_sp2
 前回の自己紹介のときに私はストレングス&コンディショニングコーチをしていますと書いたように、ストレングス&コンディショニングという言葉を使っていたと思いますが、おそらく一般の人には聞き慣れない言葉ではないかと思います。
そこで今回は、簡単にストレングス&コンディショニングについて説明したいと思います。ストレングス&コンディショニングとは何かを理解することは、指導者はもちろん、子供から高齢者、そしてスポーツ選手にとって、トレーニングをするにあたって大変重要な意味を持ち、スポーツをする上で必ず役立つことでしょう。
英語ではStrength & Conditioningと書きますが、Strengthを辞書で引くと“力、強さ、体力・・・”、Conditioningは“調節、調整すること・・・”等々、様々な意味がありますが、ここで言うストレングスとコンディショニングとはNPO法人NSCAジャパン日本ストレングス&コンディショニング協会の言葉を引用し説明したいと思います。
 まず、ストレングスとはついてですが、“ストレングスとは、筋持久力、パワー、スピードといった筋機能が関わるすべての要素において必要不可欠な能力であり、単に力発揮の大きさを表すのではなく、状況に応じて的確な筋活動をコントロールする「力を発揮するための神経―筋の能力」”と定義されます。
 そして、コンディショニングについては、“競技者におけるコンディショニングとは、目標とする試合などに向けて、その競技に適切な形で競技パフォーマンスを構成しているすべての体力要素(筋力、パワー、筋持久力、心肺持久力、スピード持久力、柔軟性、敏捷性など)をトレーニングし、「傷害の予防」と「パフォーマンスの向上」を目的として、身体的な能力を向上させていくこと”と定義されます。
もう少しわかりやすく説明をしていきます。ストレングスとは筋力を向上させることです。例えば、代表的なウエイトトレーニングであるスクワットやベンチプレスで、より重いものを持ち上げるために力を発揮する能力などが筋力という意味の一つです。が、先に「神経―筋の能力」と書きました。重い重量をスクワットで持ち上げるためには、筋肉を収縮させて主に足を動かして持ち上げます。そして、筋肉を動かす(収縮させる)ためには例外はあります(反射)が「持ち上げるぞ」というように脳から命令を出し、その命令が神経によって筋肉へと伝わり、その重量を持ち上げるための力を発揮するわけです。ですから、力を発揮するのに、神経と筋肉の関わりが重要になってきます。他の例を挙げますと、運動会や体育祭でお父さんが久しぶりに100m競争などに参加して、子供たちにかっこいいところを見せようと全力で走りだしたものの、足がもつれて、かっこいいどころか転んでしまう風景を見たことがあると思います。これは、その「神経―筋の能力」がうまく機能していない良い例だと思います。頭ではもっと早く足を動かそうとしているのに意思とは反して足が動かないのです。
次に、コンディショニングとは体力要素を向上させることです。体力要素というのは、先に述べたように、筋力、パワー、筋持久力・・・・等と様々な要素から成ります。スポーツ選手にとってそのスポーツに必要な体力要素を向上させる必要があるということです。例えば、短距離100m走の選手がマラソン選手のするような20kmを走る練習をしていても100m走で速くならないということは想像できると思います。100m走の選手には、パワー、スピードなどの体力要素が必要であり、マラソン選手が必要とする高い心肺持久力の能力は必要ないでしょう。
 ここで、あれっ?と感じる人もいると思います。というのは、体力要素の中に筋力(ストレングス)という要素があるにもかかわらず、さらにストレングス&コンディショニングと筋力(ストレングス)という意味を二重に言いまわしているのは、筋力(ストレングス)が非常に大事だということなのです。すべての体力要素(パワー、筋持久力、スピード、柔軟性など)の土台となるのが筋力(神経―筋能力)なのです。つまり、筋力(神経―筋能力)なくして体力要素を向上させることはできないということです。
 最後に、繰り返しになりますが、ストレングス&コンディショニングとは“競技者においては、目標とする試合などに向けて、その競技に適切な形で競技パフォーマンスを構成しているすべての体力要素(筋力、パワー、筋持久力、心肺持久力、スピード持久力、柔軟性、敏捷性など)をトレーニングし、「傷害の予防」と「パフォーマンスの向上」を目的として、身体的な能力を向上させていくこと”であります。また、日本ストレングス&コンディショニング協会の言葉は続いて以下のように述べられています。“一般的な人々や、子供、高齢者に対するストレングス&コンディショニングのプログラムは、健康の保持増進や、より質の高いQOL(Quality of Life)を営むための個人の身体能力を高めていくために計画されます。中高齢者にとって身体能力は、働くこと、レクリエーションを楽しむことなどに影響してくるでしょう。さらに、高齢者が自立した生活を送るためには、運動器、特に筋の機能を維持向上することが重要です。また、子供にとっての身体能力は、競技やレクリエーションにおける可能性のみならず、将来にわたって心身ともに健全な成長をとげるための土台として捕らえられます。一般の人々にとっては、健康増進や体型を改善させるものとして、あるいはレクレーション活動などのための筋力や筋持久力を高めていくものとして位置づけられるでしょう。”
 筋力(神経―筋能力)が非常に重要であるということはご理解いただけたかと思いますが、では、どうすればその能力を高めることができるのか?答えは、筋力トレーニング(ストレングストレーニング)をすることです。次回は、ストレングス&コンディショニングの目的や筋力トレーニングがなぜ必要なのかについてなど述べて行きたいと思います。
# by kamimura_sp2 | 2004-11-03 22:09

自己紹介

Profile

名前:浅井 大一郎(アサイ ダイイチロウ)
生年月日:1974年10月21日
正座:てんびん座
血液型:A型
趣味:ピアノ、ギター、ウエイトリフティング
資格:CSCS(NSCA認定)

 森永製菓のウイダートレーニング・ラボというところでストレングス&コンディショニング・コーチ(以下S&Cコーチ)をしている浅井大一郎といいます。現在、東工大附属高校陸上部のS&Cコーチを担当しています。
 私は新潟県柏崎市という海や山に囲まれたのんびりとした場所で育ちました。高校卒業後、福島県にある日本大学工学部機械工学科へ入学し、ここでも自然豊かな環境で勉学、そして部活動(バスケットボール)に励みました。大学卒業後、スポーツの世界、特にウエイトトレーニングに興味を持ち始め、S&Cコーチになろうと決意し、アメリカに留学しました。カルフォルニア州のチコ(Chico)にあるカルフォルニア州立大学チコ校の体育学部に入学し、英語に苦戦しながらもどうにか卒業し、S&Cコーチの資格を取得しました。
私がトレーニングに興味を持ち始めたのは高校生の頃でした。小学校から始めたバスケットですが、中学、高校、大学ではほとんど監督がいない状態で、チームメイトと共にメニューを考え、日々練習に励んでいました。高校生の時に、なんとか強くなろうと、もちろん理論も何もわからずにウエイトトレーニングを自分なりに始めてみたものの、なかなかうまくいきませんでした。大学では、人より少しでも多くの練習やランニングをすれば強くなれると信じ、部活が終わった後、よくめちゃくちゃなトレーニングをしていたなぁと思います。今思い出すと、練習量が多すぎることや筋力不足が原因で高校生の頃は膝や脛、腰などがいつも痛く、ただ我慢する毎日でした。バスケットは皆さんもご存知の通り、ジャンプしたり、人との接触が非常に多かったりと、身体に激しい衝撃を与えるスポーツです。つまり、ケガをしないようにするためには、その衝撃に耐えるだけの体力(特に筋力)が必要になるのです。私が高校生の頃は、高校生がウエイトトレーニングするなんてことはほとんど考えられませんでした(今でもトレーニングの普及はかなり遅れていると思いますが)。アメリカでは、高校生が当たり前のように学校のトレーニングルームやフィットネスジムに友達同士で行き、トレーニングに励んでいる姿をよく目にしました。そのため、大学生になったときには、特にスポーツ選手の体格はすばらしいものでした。彼らの筋力レベルは日本の大学生に比べるととても高いものです。スポーツ先進国であるアメリカの選手たちは、若い頃から正しいトレーニング教育を受けており、その中でトレーニングに励んでいる結果であると思います。もちろん、きつい練習をしなければ高いレベルを維持することは不可能です。そのためには、ケガを絶対にしてはならないのです。つまり、激しい練習や筋力トレーニングをするための体力レベル(筋力、パワー、柔軟性など)が求められるのです。残念ながら、日本ではウエイトトレーニングをしている高校生は非常に少ないのが現状です。一つの原因として、正しい筋力トレーニングを指導するコーチや先生がいないということが挙げられると思います。私が学生だった頃、正しいトレーニング方法を少しでも知っていたら、とよく悔まれます。私は日本の多くの人々やアスリートにすこしでも正しい筋力トレーニングを知ってもらいたいと願っています。今後、ここではケガの予防とパフォーマンスの向上を目的とするストレングス&コンディショニングについて紹介していきたいと思います。
# by kamimura_sp2 | 2004-09-22 00:24